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2008年8月14日 (木)

『モーツアルトの声を聞いた夜』

 『モーツアルトの声を聞いた日 Age30,ツェルニー30番、アメリカ音大の歩き方』(片岡ユミコ著 三樹書房発行 2004年6月10日 初版第一刷発行)0004

 著者の片桐ユミコさんは、愛知県生まれの方。題名にあるように、30歳間近でアメリカの音大・・・ニューヨーク洲立大フレドニア校に留学し、応用音楽を専攻し、学位をとるまでのいろいろな体験が飾りなく読みやすく綴られています。

 この大学の卒業生の一人ロベルタ・ガスパリさんは、ニューヨークのイースト・ハーレムにある小学校に臨時音楽教師として雇われ、50挺のバイオリンを持ち込み、熱心に課外授業でバイオリンを教えました。10年続けてそのバイオリン教室が軌道に乗ったころ、教育予算削減のため、バイオリン教室の存続が難しくなります。ロベルタは、運営資金を捻出するため、コンサートを企画し、その志と熱意に多くの一流音楽家たちも賛同して出演してくれます。コンサートの会場は、あのカーネギー・ホール・・・

 この感動的な実話は、メリル・ストリープ主演で映画化されました。ご覧になった方もおありかと思います。『ミュージック・オブ・ザ・ハート』がそれです。

 片桐ユミコさんが在学中に、上の実話のカーネギー・ホールでのコンサートに多大な貢献をしたバイオリニストのアイザック・スターンに感謝して博士号を贈るセレモニーが行われ、そのときのことも上記の本には書かれています。

 すばらしい先生、仲間、ピアノとの出会いが書かれており、よい本だと思いました。

 書名になっている「モーツアルトの声を聞いた夜」の章には、特別なホールにあるスタインウエイに夜遅く向かってモーツアルトのピアノソナタ(ハ短調K.・457)を練習していたときの体験が紹介されています。自分だけが居るそのホールで、そのソナタの2楽章を練習していると、ピアノに合わせて歌うような声でこう尋ねられたのだそうです。

「この曲が好き? ねぇ、この曲が好き?」「ぼくの作ったこの曲が好き?」

 最初は空耳かと思ったそうですが、そうではなく、声が確かに聞こえたとのことです。 「ぼくの作ったこの曲が好き?」 そう問いかけることができるのは ・・・ そうです。モーツアルト以外にはいないではありませんか。

 なんとすてきな体験でしょう。 そのとき、ホールは深遠な宇宙の中に浮かぶ銀河系のような空間になったように思えたそうです。

 さて、この本を読んで、学生時代 ・・・40年ほど前に読んだジャーク・ティボーという名バイオリニストの本に書かれていたエピソードを思い出しました。今も、ロン・ティボーコンクールという大きなコンクールにその名を残しているバイオリニストの自伝です。

 幼いティボーがバイオリンを練習していると、誰かが窓からのぞいているような気がしたそうです。ティボーは、その人物がモーツアルトだと感じました。それからはバイオリンを弾いていると、いつもモーツアルトが窓から自分を見守っているようになったそうです。

 ティボーが、あるときバイオリンの先生にそのことを話すと、先生はこうおっしゃったそうです。

「それは、すばらしい。いい話を聞かせてくれたね。・・・お礼に私からもひと言プレゼントしよう。窓の外にモーツアルトが見えなくなったとき、そのとき初めて彼は君の中にいるんだよ」

 なんてすばらしい会話なのでしょう。

 えっ、私がピアノを練習していて誰かの姿を見たり、声を聞いたことがあるかって ・・・ もう ・・・ 私がどの程度の器であるかは、先刻ご承知ではありませんか。

 あっ、でも、そういえば ・・・ 先日、ショパンの「雨だれ」をつっかえつっかえ練習していると、急ぎ足で遠ざかっていく人物がいたような気がします。

 何やら、ポーランド風の衣服を着ていたような ・・・ おお。お待ちくださ~い ショパン殿~ 

 失礼いたしました。せっかくの前半のすてきな内容が台無しになってしまう展開で ・・・ えっ、慣れているから後半は読み飛ばすことにしているから大丈夫だとおっしゃいますか。 ありがとうございます。(嬉しいような 悲しいような ・・・)

 ともかく、今日もよい日となりますように。

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