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2008年10月13日 (月)

桂 米朝 『落語と私』

 『落語と私』 桂米朝 著 ポプラ社 2005年11月6日 第一刷発行

 この本は昭和50年に出た本の新装改訂版だそうです。桂米朝さんは人間国宝の落語家です。

 落語について大事なことをほとんどすべてを網羅しているのではないかと心を打たれました。

 書かれている一節に、有名な落語家のしょうかいがあります。大きな役割を果たした三遊亭円朝は、なんと十七歳で真打ちになった天才だそうです。

 円朝のことを書いた中にこんな文章がありました。要約しますね。

 速記者の草分けの二人が、当時人気絶頂だった円朝の演ずる『牡丹灯籠』の速記本を明治17年に出版したところ、たいへんよく売れた。

 当時の若い文学者は口語体の小説を書くのに大変な苦労をしていたが、その一人、二葉亭四迷がどうしたら文語体でない小説を書けるかと坪内逍遙に相談した。

 すると、逍遙が円朝の速記本を参考にするようにとアドバイスし、これがもとになって、我が国最初の口語体小説(当時、言文一致体と呼ばれた)『浮雲』が書かれた。

 ・・・ この記事は、私にとって新鮮な内容であり、驚きでした。また、速記本で『牡丹灯籠』を読んで、その内容を怖くないと思っていた岡本綺堂(銭形平次の生みの親)が円朝の口演を寄席に聞きに行って、その名演におびえにおびえ、帰りの夜道を逃げるように走って帰ったことも記されていました。

 また、米朝さんは、マイクを使わずに五百人ほどにしっかり聞こえる声を出すのがプロとしての噺家と書いておられ、マイクを使うと「声」は「音」となるとも言っておられます。

 うーん、奥が深いですね。

  秋の夜長 ・・・先日の円楽さん、歌丸さん、今回の米朝さん、そして入船亭扇橋さんの『噺家渡世』(うなぎ書房 2007年7月31日刊)、内海桂子さん『桂子八十歳の腹づつみ』(東京新聞出版局 2001年8月15日 初版発行)など、このところ、こうした芸をきわめた方たちの本に魅せられています。

 今日も、よき日となりますように。

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