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2009年6月12日 (金)

ひびの入ったリュート

 今日、書かせていただくのは、身近な方、親しい方を天に召された方に、しばらく間も置いてからお伝えしている「リュート」のお話です。

 「リュート」は、シェイクスピアが活躍した時代に宮廷などで愛された楽器 ・・・ ギターの前身と言われている楽器です。

 あるリュート職人は、頭を抱えてしまいました。時間ともてる技術を注ぎ込んでやっと完成間近になったリュートに、あろうことか、ひびが入ってしまったからです。落胆した彼は、ため息をつきながら、そのリュートにせめて別れを告げようと弦を張り、弾いてみました。

 すると ・・・ 何ということでしょう。それまでに作り上げたリュートより深みのある音色が響いたではありませんか。

 自分の耳がどうかしたのだろうか、と彼は仲間のリュート職人たちに、ひびが入ってしまったリュートの音を聴いてもらいました。

 すると、仲間も「こんなに心にしみこんでくる音色は初めてだ。お前はいったいどうやってこのリュートを作ったんだ、教えてくれ」と口々に言いました。

 このリュート職人は、正直に、ひびが入ってしまったこと、あきらめきれなくて弦を張って弾いてみたことを話しました。

 以来、どのようにひびを入れたらそのように深みのある美しい音のリュートになるのか、職人たちは真剣に取り組んだそうです。

 いかがでしょうか。

 私たちの心にも、ひびが入ります。特に、身近な方が天に召されたときには、大きな大きなひびが入ってしまいます。修復など不可能ではないかと思われるほどにひびわれてしまいます。

 けれど、まったく傷つかない、ひびのはいらないリュートよりも、深く、玄妙な音色をひびの入ったリュートが奏でることがあるのです。

 90歳を超える現役の医師、日野原重明先生は若い頃大病を経験され、それが患者さんの心を理解するときの大きな力になっていると書いておられます。

 「苦難を経験しない人、あまりにも幸福すぎる人は、医療者としてふさわしくないのではないか」と語っておられるほどです。

 聖書には「主(イエス・キリスト)ご自身、試練を受けて苦しまれたからこそ、試練の中にある者たちを助けることができるのである」と書かれています。                           (ヘブル人への手紙2章18節)

 リュートの場合も、ひびは、進んで入れたものではなく、入ってしまったものです。けれど、そのことを通してさえ、より深みのある美しい音色を奏でる楽器へと神様は愛をもって私たち一人一人を育て、慈しんでくださっているのではないでしょうか。

 苦しみに遭っても、希望をもって歩んでまいりましょう。お祈りさせていただいております。

 今日もよい日となりますように。

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