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2010年9月25日 (土)

『援助者必携 はじめての精神科』 春日武彦 著

0004  『援助者必携 はじめての精神科』

 春日武彦 著 医学書院 

2004年4月1日 第一版第一刷発行

  図書館というのは、思いがけない出会いの場なんですね。

 たくさんの本が並んでいる書架をすっすっと(これは、あくまでも本人のつもりで、実際はたどたど、どたどたと)歩きながら目を走らせていると

「お待ちしていました。どうぞ、私を手にとってください」という感じで書名が飛び込んでくることがあるのですから。

 この本との出会いがまさにそうでした。

 著者は、最初の6年間を産婦人科医として歩みました。そして、障害児を産んだ母親へのフォローが契機になって精神科医となられたのだそうです。

 この方は、もちろん専門的な知識・経験が豊かであるのですが、それに裏打ちされて発揮されるキャラクターが秀逸です。ちょっとかいつまんで、それが感じられるところを紹介させていただきます。

 痴呆老人が財布がない、誰かに盗まれたというとき、一緒に懸命に探したお嫁さんがお礼を言われるどころか「お前はそんなところに隠しておいて意地が悪い」などと言われることがある。

 病棟で似たような経験をすることがあるが、わたしは平然としている。

「あ、せっかく手伝ってあげたのに、そういう言い方をするんだから。俺、もうグレちゃうもんね」などと明るい調子で受け流している。

 それでもまだ年寄りはぶつぶつ言っているものだが、こちらはのらりくらりとした態度でいる。折りを見て声をかけたりしてみるが、老人はにらみつける

「外はいい天気だねえ。財布も見つかったし、すてきな日だよねえ」などと脳天気な調子で話しかける。そこで和解が生ずるほど世の中はあまくない。ただし、

(1)屈託のない態度

(2)状況や気分をナレーションするような語り口

の2つで、けっこう事態はこじれずに済むように思われる。

 この方がただ者ではないところは、さらに続けてこう書いておられるところです。

 とはいうものの、これはひとつには私自身のキャラクターに関連するところがあり、また該当する老人とは赤の他人である・・・ 結果だけを見れば溜め息をつきたくなろうが、「どうしていいかわからないときにかれらは助けを求められない」という痴呆老人の立場を想像すれば、少なくともムカついたりはせずにいられるのではないだろうか。

 このほかにも、

  食事したばかりなのに「食べていない」という痴呆老人の言葉を、次の食事は本当に食べられるのだろうかという不安の表現として受けとめ、「まだ食べていない」は、「まだ次の食事を食べていない」「次の食事は食べられるのだろうか」と翻訳して解釈すべきである ・・・ そうすれば、「はいはい、いま食事はじゅんびしていますから」「とりあえずお皿を並べておきますから、楽しみにしていてくださいね」「今日は、特に食べたいものはありますか」などの対応が適切なことが、おのずからわかってくるだろう。

 などの記述があり、教えられることが多くあります。愛ある知恵と申しましょうか。あともう一回くらい、この本の内容を紹介させていただきたいと思います。

 さて、明日は日曜日、よき日となりますように。

 キリスト教会の礼拝にお出かけくだされば、神様が喜んでくださいます。

聖書の言葉

 わたし(神様)の目には あなたは高価で貴い。 わたしは、あなたを愛している。

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コメント

すごいですね。
とっさの時、相手を気遣った適切な応答ができる人というのは、天性の優しさやユーモァをお持ちの方なのだなぁと、最近つくづく思います。「言い換え辞典」「やんわり受けとめ語録集」など欲しいわたしです。どうも、ストレート直球をそのまま、胸板で、はねかえしてしまっているような・・・

※ ムーミンパパより
 コメントありがとうございます。
 この本を読んでいると、著者さんもキレてやりとりしてしまい、後で猛省しているところも出てきます。医局の事務方の人に居直ってムキになっているところも正直に書かれていますので、「ローマは一日にしてならず」というところでしょうか。長い目で自分をも見つめて育てていく・・・そういうことが大事なのだと教えてくれる本でもあるように思います。  今日も、よい日となりますように。

投稿: kei | 2010年9月30日 (木) 01時00分

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