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2012年2月 1日 (水)

「でんでん虫のかなしみ」

 昨日の『橋をかける』で、美智子妃殿下が四歳から七歳までの間に読んだり、ご家族から聞かせてもらった話の一つとしてあげておられる「でんで虫のかなしみ」 新美南吉 を、美智子妃殿下のお書きになっている文章を引用する形で紹介させていただきます。

       □  ○  ◇  ☆  ※  ☆  ◇  ○  ◇

 まだ小さな子供であった時に、一匹のでんでん虫の話を聞かせてもらったことがありました。不確かな記憶ですので、今、恐らくはそのお話のもとはこれではないかと思われる新美南吉の「でんでん虫のかなしみ」にそってお話いたします。

 そのでんでん虫は、ある日突然、自分の背中の殻に、悲しみが一杯つまっていることに気付き、友達を訪ね、もう生きてはいけないのではないか、と自分の背負っている不幸を話します。友達のでんでん虫は、それはあなただけではない、私の背中の殻にも、悲しみは一杯つまっている、と答えます。小さなでんでん虫は、別の友達、又別の友達と訪ねて行き、同じことを話すのですが、どの友達からも返って来る答は同じでした。そして、でんでん虫はやっと、悲しみは誰でも持っているのだ、ということに気付きます。

 自分だけではないのだ。私は、私の悲しみをこらえていかなければならない。この話は、このでんでん虫が、もうなげくのをやめたところで終わっています。 (中略)

 この話は、その後何度となく、思いがけない時に私の記憶に甦って来ました。殻一杯になる程の悲しみということと、ある日突然そのことに気付き、もう生きていけなにと思ったでんでん虫の不安とが、私の記憶に刻み込まれていたのでしょう。少し大きくなると、はじめて聞いたときのように、「ああよかった」だけでは済まされなくなりました。生きていくということは、楽なことではないのだという、何とはない不安を感じることもありました。それでも、私は、この話が決して嫌いではありませんでした。

           □  ○  ◇  ☆  ※  ☆  ◇  ○  ◇

 新美南吉の物語の内容、そして美智子妃殿下のお心とがあいまって印象深く伝わってくる文章 ・・・ まさに 橋がかかる思いがいたしました。

 今日も、周囲や自分自身に橋が築かれる良い日となりますように。

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