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2012年8月 3日 (金)

『ローマ人の物語 Ⅵ』 パクス・ロマーナ

Photo 『ローマ人の物語 Ⅵ』

 ー パクスロマーナ ー

塩野七生 著

新潮社 1997年7月7日 発行

 この巻は、カエサルの遺書に後継者として指名されていたアウグスツスの歩みが記されています。 

 19歳だった若者が77歳で生涯を終えるまで ・・・ 著者、塩野七生さんは巻頭に次のように書いておられま。

 天才の後を継いだ天才でない人物が、どうやって,天才が到達できなかった目標に達せたのか。それを、これから物語ってみたい。

 アウグスツスというのは、紀元前27年に35歳になっていたオクタヴィアヌスに元老院が贈った尊称で、元来は神聖で尊敬されてしかるべきものや場所を意味する言葉だったそうです。本来は武力や権力を想像させることのまったくなかった言葉が次第に最高権力者をさす意味内容を形成していったのは、オクタヴィアヌスが粘り強く,巧妙にいろいろな施策、実績を積み重ねたことによるのでしょう。 

 さて、カエサルが考えながら成し遂げられなかったことをアウグスツスが成し遂げ得たのは、彼には若いという強みがあったこと、そして、本人の努力もさることながら、軍事の才には恵まれていない彼の右腕となる人物をカエサルが早くにつけていたからです。 

 それが、アグリッパという人で、この人も若かったのですが、戦えば負けるという実績しかなかったアウグスツスは、33歳以後は、軍事はアグリッパにゆだねっぱなしで政務に打ち込めたそうで

 その政務を補佐する人物として、これはアウグスツス自身が見出して登用したのがマエケナスという人物で、マエケナスは、まだ海のものとも山のものとも定かでなかったアウグスツスを一生、影で支え続けて生きることを決断し、主として難しい外交交渉に取り組み、成果を上げ続けたとのこと。

  このあたり、 名コーチを登用して好成績を上げる名監督を連想させますね。

 現在よく目にするインフラ・ストラクチャーという言葉そのものはこの時代にはなかったものの、「の下に」とか「~の中に」を意味する「インフラ」、そして構造を意味する「ストゥルクトーラ」はいずれもラテン語で、公共事業の整備を最重要視したローマ人が構築、建造したものが2千年上を経て堅牢さを保っていることとあいまって、歴史の重さを考えさせられます。

 すべての道はローマに通ず ・・・ その道路は、幅も広く、貿易、軍事等の動脈の役割を果たし続けました。

 いっぽう、日本においては、江戸に通ずる街道も、比較的小型だった馬が両側に荷駄を付けてやっと通れる幅の道が多かったそうです。

 この違いは、もともとの国土のスケールにもよるでしょうが、ローマの道は、他民族への速やかな攻略を頭に置いて作られ、日本の道は、江戸へ大軍が攻め上ってこようとしたときにそれを阻む防衛を意図していた、ということが根っこにあるのかもしれません。

 今日という日、願っているところに通じる道を切り拓くよい日となりますように。

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