『春風ぞ吹く』
宇江佐真理 著
新潮社 2000年12月20日 発行
主人公、村椿五郎太は、彼の祖父の祖父 ・・・顔も知らぬ祖先が料理茶屋に刀を忘れたことが公になり、武士の魂を忘れるとは何たる不届きととがめられて、小普請組という身分に落とされ、苦労しています。
彼の祖父も、父も、先祖の不始末をうらみながら、励むもののその小普請組という身分から抜けだせないでいます。小普請組は、役職に就くための予備軍で、普段は、壊れた屋根瓦や垣根など小さな破損を修理する部署です。
彼に思いを寄せる女性もいるのですが、無役で生活も苦しい彼のところに嫁ぐことを相手の親は許しません。学問で身を立てようと試験に通るように努力しながら、町の代書屋でアルバイトし、恋文などを代書することで少しばかりの収入を五郎太は得ています。
彼のお師匠さんは、五郎太の資質を認めつつ、どうも、お前の論文は恋文調になってきた、どうなっているのだと首をかしげつつ、叱責します。慧眼と言うべきでしょうか。
いろいろな出来事を経て、五郎太が学問吟味(登用のための試験)に合格したとき、この師は五郎太の顔をじっと見て、言います。「おぬしは……わしの誇りであります」 五郎太の胸に熱いものが込み上げてきます。
さて、今日もよい日となりますように。
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