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2013年8月24日 (土)

聴き合う社会を

0004 月刊誌『婦人之友』2013年9月号の「今日の祈り」というところに、焼山満里子さんというかた(東京神学大学准教授)が、熊本県の水俣市を訪れて書かれた文章があります。「一匹の羊を捜し出す神」という題です。

 水俣病と患者さんについて書いてこられた作家、石牟礼道子さんの「なみだふるはな」に紹介されている患者さんの声を読んだのが、水俣市を訪れる契機となったそうです。 

 その患者さんは、石牟礼さんにこう語ったとのこと。

「道子さん、私は全部許すことにしました。チッソも許す。私たちを散々苦しめた人たちも許す。恨んでばっかりおれば苦しゅうてならん。毎日うなじのあたりにキリで差し込むような痛みのあっとばい。痙攣も来るとばい。毎日そういう体で人を恨んでばかりおれば、苦しさは募るばっかり。親からも、人を恨むなといわれて、全部許すことにした。親子代々この病ばわずろうて、助かる道はなかごたるばってん、許すことで心が軽うなった。」

※ 「なみだふるはな」 石牟礼道子・藤原新也 河出書房新社 2012年 

  この患者さんのことを知りたいと、焼山さんは水俣に足を運ばれたのですね。 この患者さんは、水俣病の被害を受けた網元の家の娘さんだそうです。

 水俣病のことがまだはっきりしないまま病人が次々と出始めたとき、水俣の漁師のとった魚は買わないという不買運動が起き、会社に補償を求める患者に、企業に依存している町が駄目になっては困ると、公害を隠そうとする動きも出てきて、幾重にも患者さんは苦しみます。

 この後、焼山さんは水俣病に生涯かかわってこられた原田正純というお医者さんのことばを紹介しています。

 水俣病事件の真の原因は、有機水銀にとどまらない、「人を人と思わない状況」、それは人権無視、差別という言葉で表現される人間疎外・・・。 病気が起こってしまったあとに、その被害を最小限にくいとめる努力がなされず、むしろ企業や日本社会の高度経済成長を進めるために、原因を隠蔽しようとした。その結果、患者救済が遅れ、被害が拡大した。ここに「人を人と思わない状況」がある。

 

 水俣市を訪れて、焼山さんは「だれかを犠牲にして、豊かに便利になる社会よりも、皆で貧しくなる社会になっていきたいと強く思いました。」と書いておられます。そして、「もしももっと早くチッソが、国が、日本の社会に生きる一人一人が、猫や鳥や魚の不審死に始まる水俣の声を聞いていたら、人間がおこした悲惨を少しは救えたのではないでしょうか」とも書いておられます。

 弱い立場にあるかたの声を、心を傾けて真摯に聴く ・・・ お互いの声を相手の人格に敬意を払いながら聴き合う ・・・ そういう社会を創り出したいと願います。

 今日も、よい日となりますように。

 明日は日曜日。キリスト教会の礼拝にお出かけください。

 

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