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2014年5月16日 (金)

『静おばあちゃんにおまかせ』

0002『静おばあちゃんにおまかせ』

中山七里 著

文藝春秋

2012年7月15日第1刷発行

 この作家の著書、推理小説を何冊か読んでから、この書名を見たとき、あのアガサクリスティの創出した名探偵の一人、マープルさんを思い浮かべました。

 読み始めてみると、期待に違わずと申しますか、老婦人、高遠寺静(しずか)さんの名推理は期待以上・・・難事件をものの見事に説き明かしていきます。現場を実際に見てくるのは法学科2年生の孫の円(まどか)・・・円さんは葛城公彦という刑事を助けて動くのですが、事件を解決するのは静おばあさんです。彼女は、頭脳明晰そのもので理路整然と事件だけでなく世の中のこと全般について孫を的確に指導して育てていきます。

 元裁判官という経歴を持つおばあさんは、そうそういるものではありません。 こんな一文があり、身が引き締まる思いがいたしました。  

 国境を一つ越えるだけで善悪、正邪の基準は大きく変わってしまう。それはね、所詮人間を裁く法律が国そのものだからよ。法律はその国の体制や価値観と無関係ではいられない。・・・人を裁く立場の人間はその事実と向き合いながら、裁定を下し続けていかねばならない ・・・理屈一つでどんな相対化も可能ならしめる世界。その中に身を置こうとするなら、善悪を律するのは法律の条文ではなく自分自身だ。己の中にある正義と秩序を問い続けながら他人を裁くーそれは多分、安寧や平穏とは無縁の生き方になる

 冤罪について、静さんはこう円さんに語ります。

 「そもそも裁判官を目指すのならこのことは覚えておきなさい。人を裁くということは結局自分の正義や価値観と対峙する、つまり自分自身を裁くことなの。だから自信のない判決は下すべきじゃないし、下すのであれば、もし、それが冤罪であったのが分かったときは職を辞する覚悟で臨まなければ駄目よ。何故なら自分の裁量で人一人の人生を決定してしまうのだから。」

「でも、そんな大変な仕事なのに給料安いなんて割に合わない・・・」

「仕事の価値はね、組織の大きさや収入の多寡じゃなくて、自分以外の人をどれだけ幸せに出きるかで決まるのよ」

 この作者は法律の条文に詳しく、その精神についても考えを深めて歩んできたかただと思います。

 静おばあちゃんの名探偵ぶりは、すごいものです。この世のものとは思えないほど・・・・この言葉の意味は本書を最後までお読みになるとおわかりになります← 思わせぶりでごめんなさい。

 今日も、よい日となりますように

 

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