『音をたずねて』
三宮麻由子著
文藝春秋
2008年1月10日 第1刷発行
「あとがき」によりますと文藝春秋のPR誌「本の話」に三宮さんを魅了し続けている「音」をテーマとして約二年間連載したものをまとめたものだそうです。
ガラスの風鈴を作りに行って、息を吹き込んでガラスをふくらませ、絵付けをする文を読んでいると、三宮さんが目が見えない方であることを、まったく忘れてしまいます。
いま生(あ)れし風鈴の音の涼しさや
麻由子
そういう具合に、鈴と風鈴、時報を告げるお姉さんに会いに行ったこと、盲導犬とのお泊まり体験、ピアノ工場、長岡の花火大会、柘植の櫛の作られるところ、お茶の香り、お箏、寄席、鼈甲の製品作り、秋芳洞、放送の音響を担当する効果マンさんの音作り現場などなどを探訪。芭蕉さんってどんな声だったんだろうとイメージを繰り広げる章もあります。
すぐれた耳の持ち主が案内人となって、読み手に新しい世界を開いてくれるところが何とも素晴らしいのです。
ピアノ工場では、ピアニストのリヒテルが日本での演奏会に必ず指名したピアノを実際に弾いて感じたことも書かれています。
また、長岡の花火大会のフィナーレは、「音のしない花火」・・・広い土手で鈴生りになって花火を楽しんだ大勢の人が、花火を打ち上げてくれた職人さんたちに向かって一斉にペンライトを振って「ありがとう」を伝え、職人さんたちも光で返事をする恒例のエール交換・・・ペンライトの代わりに携帯電話のバックライトを光らせている人もいるそうです。
すてきな探訪を生き生きとした文章で表現し、伝えていただき、本当にありがとうございます。多くのことを学ばせていただきました。
今日も、よい日となりますように。
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