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2015年4月 3日 (金)

『ことばのともしび』 5  孤独

 末盛千枝子さんの本、『ことばのともしび』から引用させていただいての記事、今日でひとまずの区切りとさせていただきます。

 1回目でご紹介したラジオ放送、「心のともしび」はいつも次の言葉で結ばれます。
 「暗いと不平をいうよりも、すすんであかりをつけましょう」 ・・・ 末盛さんの文章、そして生き方は、まさにこの通りだと感じ入り、5回にわたって紹介させていただくこととなりました。 厚くお礼申し上げます。
 孤 独
  英国の作家、オスカー・ワイルドは『幸福の王子』などをはじめとする本当に美しい作品を書きましたが、自分自身は同性愛事件によって、最高に華やかな作家としての絶頂から奈落の底に突き落とされた人です。
 彼は名誉も財産も家族もすべてを失い、監獄に入れられました。そして獄中で、与えられた紙に、事件の相手への恨みつらみを書き始めます。しかし、その文章はやがて心からの懺悔と祈りの言葉になっていきます。日本では、「獄中記」と訳されているそのほんの原題は、聖書の詩篇からとった「深き淵より」といいます。どれほどの孤独の中でそれを書いたかと思うと涙があふれます。しかし、これほど美しい魂の書は他にないとも思うのです。
 ワイルドは出獄後、英国に戻ることなく二年ほどで亡くなってしまうのですが、しばらくの間、フランスの田舎に暮らしていました。毎日朝食を食べに訪れた村の食堂で、ある日土地の親子と一緒になったのですが、そのとき、子どもがテーブルの上に水をこぼして母親に叱られるということがありました。ワイルドは少年の頭をなでながら、母親に向かって「子どもとはいつ別れが訪れるかわからないのですから、叱ったりしてはいけません」と、涙をぽろぽろ流して言ったそうです。破滅した作家の孤独の極みの姿のように思われます。もちろん、少年は、その人が有名な作家であることなど知るはずもありませんでした。
 何十年かたって、ワイルドの息子が、名前も何もかも変えていきてこなければならなかった自分の人生を本に書きました。すると、その本を読んだかつての少年が、フランスから手紙をくれたのだそうです。そこには村の食堂での出来事が綴られていました。
 孤独の中に育ったワイルドの息子は、父親が自分たちをどんなに愛していたかを知ることになったのです。
  ◇  ○  □  ※  ☆  ※  □  ○  ◇
 いくつかの 「もし ~ しなければ」が積み重ならないと、ワイルドの息子が父の愛を知らずに終わってしまっていたことが思われます。
 そして、もし、この本に私が出会わなければ、私もこの話を知ることなく歩んでいたに違いありません。    人生は、いろいろな出会いに満ちています。  すてきですね。
 末盛千枝子さん、よい本、すてきなお働きを本当にありがとうございます。心からお礼申し上げます。
 今日も、よい日となりますように。

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