『一朝の夢』 梶 よう子 著
梶 よう子 著
文藝春秋
2008年6月25日 第1刷 発行
主人公、中根興三郎(こうさぶろう)は八丁堀の奉行所に勤める役人です、でもテレビで活躍する同心のようには派手な活躍はせず、地味な事務方をしています。6尺ほどの長身も、自信なげに前屈みで歩くので、風采が上がりません。
仕事とは関係ないのですが、そんな彼も、こと朝顔にかけては、人が変わったように雄弁になり、彼の庭にはめずらしい朝顔の花がいっぱいです。 これは、彼の唯一の取り柄のようです。
けれど、花合わせ ・・・品評会・コンクールのようなものでしょうか・・・に出品し、それで名を挙げようという気持ちは彼にはないようです。
興三郎は、こんなふうに考えているのです。
◇ □ ○ ☆ ※ ☆ ○
たしかに、様々な過程で思いがけない名花になることもあるが、それは自分が咲かせた花ではない。朝顔が咲いてくれたのだと興三郎は思っているのだ。だから興三郎は花合わせに朝顔は出さない。花はそれ自体、みな必死で咲いている。その花たちに優劣をつけるのは、人の勝手でしかない。
◇ □ ○ ☆ ※ ☆ ○ □ ◇
地味な主人公ですが、井伊直弼や、いろいろな人物が登場し、事件は次々起こります。
幼なじみの女性との思いがけない再会もあるのですが、恋の面でも、器用には動けない主人公 ・・・ けれど、なかなかに読ませてくれる作品ではありました。
今日も、よい日となりますように。
| 固定リンク
コメント