« 山道を抜けると 蓮根畑だった | トップページ | 「ひとつの歌に導かれて」  武満徹さん »

2015年7月11日 (土)

『博士の本棚』 小川洋子 著

0001 『博士の本棚』

小川洋子 著
新潮社2007年7月25日 発行
 映画にもなった『博士の愛した数式』の著者でもある小川洋子さん(岡山県出身)が読まれた本のことや、文筆生活の苦しさ、やり甲斐などを冗長にならないすっきりした文体で綴っておられます。
 印象に残ったのは、アメリカの『ニューヨーカー』という雑誌の名物編集長ウイリアム・ショーンという人物のことです。この人は、多くの作家を登用し、その作家たちから、「あなたのために書くのです」と言われるほど、信頼を寄せられていたそうです。『沈黙の春』を執筆したレイチェル・カーソンもそのひとりだったとのこと。
 ショーンさんは、作家の才能と交感することができ、作家がどこに向かって進んでいるにせよ、そこまでの道のりを示すことができたのだそうです。そして、「あなた以外にこれをかける人はいないんですよ」と言って、作家を励ましたのだ、と紹介されています。
 すごい方ですね。
 小川洋子さんは、ずっと小説を書いていこうと志し、早稲田の文芸科に進んだとき、平岡篤頼という先生に出会われ、本を書くようになって恩師に送ると、必ず、どこか一点をほめて手紙をくださったのだそうです。例えば「肩についた犬の毛が、夕日に光って見えるあの一行。それこそがあなたの小説を支えているのです」というように。
 この本では、ずいぶんたくさんの本が登場しています。私なりにショックだったのは、その本たちの中で私が今までに読んだことのあるのは、たった一冊、『アンネの日記』だけだったことです。 しかも、小川洋子さんは、アンネたちの隠れ家生活を支え、発見されてアンネたちが強制連行された直後に隠れ家を訪れて、そこに散逸していたものの中から『アンネの日記』を拾い上げて保管したミープさんと直接会って、交流もしているです。
 大きく目を開けてくれる本に出会ったことを感謝しています。さしあたって、武田泰淳さんの奥さんで、自らも作家であった武田百合子さんの『冨士日記』、村上春樹さんの『中国行きのスロウ・ボート』などを読んでみたいです。
 今日も、よい日となりますように。
 明日は日曜日。キリスト教会の礼拝にお出かけください。

|

« 山道を抜けると 蓮根畑だった | トップページ | 「ひとつの歌に導かれて」  武満徹さん »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 『博士の本棚』 小川洋子 著:

« 山道を抜けると 蓮根畑だった | トップページ | 「ひとつの歌に導かれて」  武満徹さん »