« ウイーンフィルのニューイヤーコンサート | トップページ | 薬  食前 食後 食間 »

2016年1月19日 (火)

『母と娘の協奏曲』 千住文子・千住真理子

Photo 『母と娘の協奏曲』 

千住文子・千住真理子  著

時事通信社 2005年5月20日 第1刷発行

 学者である夫、千住鎮雄とともに、3人の芸術家、日本画家千住博さん、作曲家千住明さん、ヴァイオリニスト千住真理子を育てた母、千住文子さんと娘さんとの対話形式で書かれている一冊です。

 千住三兄妹が大きな信頼を寄せ、口をそろえて「表現者になっていたら、きっとすごいことになっていただろう」という、母、文子さんは、この本の「芸術と表現者」の章で、次のように語っています。ブラームスのヴァイオリン協奏曲をどこも支障なく弾いた千住真理子さんは、大きな拍手を受けながら、どこか不満足。そしてその演奏を聴いていた文子さんも、それはどこなんだろうと朝4時まで考えていて一つ気がついたことがあるという場面です。

 ◇   □   ○   ☆   ※

文子 足りなかったものは、年齢と、あと一つ 

 真理子  教えてよ。もういいじゃない、早く!

 文子   本当は自分で分かってほしいから・・・・・・でもいい、言っても?

 真理子 言ってよ。

 文子   呼吸よ。

 真理子  呼吸? 呼吸がどうだったの。

 文子   あのね、演奏には横の動きというのがあるじゃない、横の波と言った方がい     いかしら。それと縦の波があるのね。縦の波と横の波とが交わって十字となる。この縦の波が若いの。分かったかしら?

真理子 ああ、ああ! 分かった! 分かったけれど、それは難しい、とっても。

文子   縦の波が呼吸の息なのよ。深い息があれば、両方の波が交わった点にそれがあれば、もっと立体感があったのよ。 ・・・・・ それには何が必要なのか。 人間です。(笑)

真理子 それじゃ、私が人間が浅いってことになっちゃうじゃないのよ。(笑)

文子   そう。人生経験が深いか浅いかっていうことよ。悲しみを悲しみと感じるところを、あなたはあまりに忙しくってはしょってしまっている。忙しさの中で、人の言った言葉を少しアバウトに聞いている。何かがあった時に十分に人の心を汲み取ってくること、それができるだけの時間がないのよ。だからご飯だって三口で食べる(笑)。それなのよ。

真理子 あーん、図星だねぇ。

文子   それがあの曲の中のどこか分かるでしょう。ブラームスが掘り下げている箇所で心の息遣いが物足りないの。分かるでしょう?

真理子 分かりますよ。よーく分かります。そうだね。

             ◇   □   ○   ☆   ※

 一流のヴァイオリニストとして、長年世界で活躍してきている千住真理子さんに、音楽家ではない母親の文子さんが語る言葉が、相手が図星だと受け止めざるを得ないものになっている ・・・ そういう歩みを長年にわたって築き続けていることが伝わってきて、頭が下がります。

 今日も、よい日となりますように。

 

 

 

|

« ウイーンフィルのニューイヤーコンサート | トップページ | 薬  食前 食後 食間 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 『母と娘の協奏曲』 千住文子・千住真理子:

« ウイーンフィルのニューイヤーコンサート | トップページ | 薬  食前 食後 食間 »