« マット記念日 | トップページ | ゆで卵の友 »

2016年1月31日 (日)

『命の往復書簡』 千住文子・千住真理子

0003 『命の往復書簡』 2011~2013

千住文子・千住真理子 著
文藝春秋 2013年4月25日 第1刷
 2011年3月11日の東日本大震災と併行するかのように、千住家には大きなことが起きました。
 80歳を越えて心臓の大手術を受けた千住文子さんは、2011年に85歳となっておられました。そこに、腎臓に末期の腎臓癌が見つかり、骨にも転移していることが分かりました。敗血症にもなり、意識がもうろうとしている文子さんに千住博さん、明さん、真理子さんは三人それぞれの言い方で文子さんに告知し、がん研にお連れしたとのこと。
 腎がんと骨の癌の摘出を同時に行う大手術・・・ それが成功して命を取り留めた文子さんと、演奏活動、ホスピスへの音楽訪問活動などで過密なスケジュールを組んで世界を飛び回っている真理子さん。
 なかなか会って語り合う時間がとれないこともあって、手紙が往復するのですが、それだけに内容も凝縮・充実しています。
 真理子さんがボランティアで訪れたホスピスのロビーで、どこに立ってヴァイオリンを弾いたら集まる方々によい音が届けられるか、その立ち位置を決めるのに、ピアニストと二人で苦慮していたとき、たまたまその病院で大切な治療を終えた文子さんが現れて、立ち位置の決定という大きな役割を担われたそうです。  
 その演奏会は、若き真理子さんを厳しく指導していた師、江藤俊哉さんがかつて褒めた世にも美しい「天を舞う音」が鳴り響き、「とても美しいものを心いっぱいに感じ」させるものとなったそうです。
 千住文子さんは、そのときのことを思い浮かべながら、芸術の持つ力について、考えてみるのは初めて、といいながら記しておられます。
            ◇    □    ○    ※    ☆
 芸術の力は、おのずと発するようにも思える。そしてやはり、その作品の真価にもよるのではないだろうか。聞き手、又は見る人が、多くのイマジネーションを受けて、より多くの感動をする。
  それは相手の心の中で、どんなにでも広がり、なぐさめ、喜び、希望さえも生むだろう。その時、力強く、その芸術は輝く。
  考えようによっては、芸術とは傷つき、苦しみ、悲しむ人のためにこそある。その美的感動は生きる勇気、生きる活力、生まれてきてよかったという感動をさえ教えてくれるのだ。そう思えるのが芸術力なのだ。そして芸術力によってそれは真価を問われるのだ。
 さて私は今、芸術そしてボランティアをするということの奇妙に思えるこの両者の中での、芸術を追い求めるマリ(真理子)の根本的是非論のようなものを考えて、迷路に落ち込んでしまったわね。長い夏を考え続け、とうとう到達したような気もする。
          ◇    □    ○    ※    ☆
 この本は、この手紙を読んで、しばらくいろんなことを考えてしまった真理子さんの手紙へと続きます。
 すみません。いきなり一冊の本のある部分をとりだして読んでいただくことになって・・・。
 関心を抱かれた方は、お読みくださいまし。 
 (血の滲むような思いで芸術を追究し、研鑽を積み、ステージに立ち続けている千住真理子さんと、その真理子さんとともに歩み続けた文子さんとは、言うまでもなく、遥かに遠い遠い距離のある私ですが、一歩でも高まりたいと思います。)
 今日も、よい日となりますように。
 日曜日。キリスト教会の礼拝にお出かけくださいますように。
 

|

« マット記念日 | トップページ | ゆで卵の友 »

コメント

五嶋みどりさんのバッハ作曲「無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ」を聴いていますと、本当に、ブログふやしていきつつの太字部分そのものの感情が私にも湧き上がってきます。これからも、素晴らしい芸術に出会える機会を求めていきたいです。
 
※ ムーミンパパより
 すてきなコメント、ありがとうございます。素晴らしい芸術に出会うこと・・・足を運ばれる コンサートなどや、そしてそして、ご自分の演奏や練習、錬磨の中でも、ますます豊かに実現してくださいますように。
 私も、ペパーミントグリーンさんの足下にも及びませんけれど、聴いていただくに耐える演奏・音楽療法のセッションができるようにと、練習の時間を増やしつつあります。もっとも、腕が痛くならないようにと、最初からブレーキをかけていますけれども。 (^J^)
 追伸 ・・・ 先週土曜日のテレビ「サワコの朝」に大村智先生が出演され、ますます、お人柄に惹かれました。本当にすてきなかたですね。

投稿: ペパーミントグリーン | 2016年2月 6日 (土) 10時41分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 『命の往復書簡』 千住文子・千住真理子:

« マット記念日 | トップページ | ゆで卵の友 »