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2016年2月13日 (土)

『ヴァイオリニスト 20の哲学』 千住真理子

20
『ヴァイオリニスト 20の哲学』 

千住真理子

ヤマハミュージックメディア 

2014年12月10日 初版発行

2015年4月1日 第4版 発行

  若くしてプロの道に入った千住真理子さんは、2015年にデビュー40周年を迎えられました。

 本の題名に、哲学とあります。大学では音楽科ではなく、確か、哲学を学ばれたのだったと思います。 といっても、難しい哲学用語の並ぶ本ではありません。 

 第一章 月をさす指 が、分かりやすい例で深いことを語っておられると思いました。引用させていただきます。

 ◇    □     ○     ☆

 少女は夜空を見上げていた。澄んだ空気に明るく輝く月が美しいと思った。あんなに月が美しいことを、みんなにも教えなくっちゃ。そう思った少女は月を指差しながら「ほら見て、月があんなにも美しい」と周りの人に教えた。

 来る日も来る日も、月を指差して皆に教えているうちに、少女は自分の指先にハッと気がついた。おや?爪が伸びているわ。美しい月を指差して教えてあげるのに爪が汚いとダメだわ、と思った少女は爪を程良く切り、それを研ぎ始めた。時に色を塗り、毎日爪のケアに明け暮れるようになった。

  年月が経ち、来る日も来る日も爪を磨きながら少女が女性へ成長した頃には、もはやあの美しい月のことは忘れてしまっていた。

 こういう話を、本で読んだことがあります。私が高校生の頃です。音楽について書かれていたその本は海外の書物でしたが、その著者の言いたかったのはどんなことだったのでしょう。

 「音楽の感動を表現するために技術を磨いている・・・・・はずなのに、そのうち、技術を磨くことが目的に終わってしまうことが多いことは大変悲しいことだ」と締めくくられていました。 この話は後の私に大きく影響していきます。 中略

 目指していた「豊かな音楽」とはまったく違う「ヴァイオリン弾き」になってしまっていたということにならないよう ・・・ 忘れてはならないとても大切なことは、「音楽の心」です。偉大なる音楽家たちが目指した「月」は「音楽の感動」です。心を失った音楽は、もはや単なる「音の羅列」に過ぎません。そこには何もない、無味乾燥な音の高低があるだけです。

 どうか、あの美しい月を見失わないで。そんな願いを込めて私はこの本を書いています。

             ◇    □     ○     ☆

 第18章の「ボランティアで学ぶ」 も、心に語りかけてきます。

 ・・・ 自分自身に絶望し、生涯二度とヴァイオリンを弾くまいと決断していた千住真理子さんにもう一度ヴァイオリンを手にさせたのは、「ホスピスの患者さんの最期の夢をかなえるボランティア」のかたからの一本の電話だったそうです。

 よろしければ、どうぞ。

 今日も、よい日となりますように。

 明日は日曜日。キリスト教会の礼拝にお出かけくださいますように。

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