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2016年3月25日 (金)

『正岡子規の〈楽しむ力〉』  坪内稔典 著

0014_2 『正岡子規の〈楽しむ力〉』  

坪内稔典(としのり) 著
NHK出版 生活人新書 
2009年11月10日 第1刷発行
 著者の坪内稔典(としのり) さんは、「ねんてん先生」と呼ばれ、親しまれている方で、正岡子規の研究の第一人者。俳誌「船団の会」代表です。
 ねんてん先生の句には、たとえば、次のような句があります
・三月の甘納豆のうふふふふ
・たんぽぽのぽぽのあたりが火事ですよ
 ちょっと風変わりでしょうか。
それはともかく、正岡子規についてです。
 ◇  □   ☆   ※
 子規は文学において三つの大きな仕事をした。俳句の革新、短歌の革新、文章の革新である。その三つの仕事を彼は仲間とともに行った。書斎にひとり籠って孤独に作業するのでなく、仲間とともに作り、仲間とともに鑑賞、批評した。作者という個人がいつも他者に向かって開かれていたのだ。
 多くの方がご存じのように、子規は結核を患い、カリエスに苦しみ、外出することができない闘病生活をおくらざるを得なくなりました。けれど、稔典さんの『正岡子規 言葉と生きる』(岩波新書)には、子規のこんな言葉が紹介されています。 病気の境涯に処しては、病気を楽しむといふことにならなければ生きて居ても何の面白みもない ・・・すごいですね。 俳句については句会、歌については歌会、文章については山会というのを開きました。文章には山(クライマックス)が必要という考えから付いた名前だそうです。
 そして、それぞれの会にいろいろな工夫をしました。たとえば、線香に火を付けて、それが燃え尽きるまでに、できるだけたくさんの句、あるいは歌を詠もうというような趣向を凝らし、会の終わり、あるいは休憩時には会話しながら食事会を楽しみました。闇汁会という企画も立てました。集まる人も多く、子規が芭蕉と同等、あるいはそれ以上と評価した与謝蕪村の蕪村忌の句会には、46人の記念写真が撮られたほどです。
  詩人去れば歌人坐にあり 歌人去れば 俳人来り永き日暮れぬ 
    子規 明治33年
 短歌については、古今和歌集よりも万葉集を評価しました。文章に重きを置いた活動では、民俗学者の柳田國男さん、小説家の司馬遼太郎さんが高く評価されています。
 坪内稔典さんは、正岡子規が苦しい病状の時にもめげずに、友人をいろいろ分類したり、あだなをつけたり、楽しみをつくり出す在り方・生き方に着目し、それを本書の題になさったのですね。子規の楽しむ力を「楽力」(らくりょく)と呼んでおられるところもあります。 子規忌に近い日に坪内家では恒例の行事「子規と食べる日」を設けて友人などに来てもらい、子規の本に載っている食事を再現するなどして楽しんでおられるそうです。稔典先生も、楽しむ力を豊かにもっておられるのだと思います。
 こんなふうに、生涯をかけて魅せられる人に出会えるのは、すてきなことですね。
 今日も、出会いのあるよい日となりますように。
0001           2010年12月17日 初版第1刷発行
 

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