« 『神様の薔薇』 下川香苗 | トップページ | 『毎日読みたい美智子さま』 ー愛が生まれるおことば81ー »

2016年3月17日 (木)

『日本のヴァイオリン王』 ー鈴木政吉の生涯と幻の名器ー

0008 『日本のヴァイオリン王』 ー鈴木政吉の生涯と幻の名器ー

井上さつき 著
中央公論新社 2014年5月10日 初版発行
 先日、イタリアの名工、ストラディバリのヴァイオリンに匹敵するヴァイオリンをニューヨークのヴァイオリン職人が作ろうとチャレンジしていることをご紹介しました。
 この本を読んで驚きました。嬉しい驚きです。日本にもすばらしいヴァイオリンを作った人がいたのです !!
 1900年(明治33年)パリ万国博覧会の楽器部門の受賞者リストに「ヴァイオリン スズキ・マサキチ ジャポン」とあるのだそうです。
 鈴木政吉さん・・・名古屋の老舗、鈴木ヴァイオリン製造株式会社の創業者 元は三味線職人。三男の鈴木鎮一さんは、優秀なヴァイオリニストで才能教育「スズキメソード」の創始者。ちなみに、鈴木家の兄弟は弦楽器に堪能な人が多く、1928年に兄弟で鈴木クワルテットを結成し演奏活動を展開していたとのこと。第一ヴァイオリン 三男 鈴木鎮一・ 第二ヴァイオリン 六男 喜久雄・ ヴィオラ 四男 章(あきら)・チェロ 五男 二三雄 ・・・ 父親の政吉さんは、「演奏者も楽器も私の自作で、純国産」と喜んでいたそうです。
 鈴木鎮一さんは、ベルリンのアインシュタインの家でブルッフの協奏曲を弾き、同席した婦人が、「日本で成長した鈴木さんの演奏からドイツ人ブルッフを感じた。いったいこんなことがありうるのか」とアインシュタインに問いかけたそうです。自らもヴァイオリンをよく演奏したアインシュタインは「人間はみんな同じですからね、奥さん」と答えて、鎮一さんは強く心を打たれたそうです。
 さて、肝心のヴァイオリンのことを書かせていただきます。
 この鎮一さんがベルリンに留学していたとき、ドイツはひどいインフレで、たとえば、外国郵便のハガキ代は日本では4銭・・・それが32万マルクだったそうです。
 生計に困って、ヴァイオリンの名器を換金する人たちもあり、そうした事情もあって、グァルネリが鈴木家にやってくることになったとのこと。政吉さんは、この銘器をも研究してヴァイオリン作りに刻苦精励しました。
 鈴木ヴァイオリンは、多くの人が手に入れることができるようにと作られた量産品と高級手工ヴァイオリンとがあったのですが、後者のほうは、探しても、ほとんど見当たらない状態だそうです。
 ようやく見つかったのが、もと愛知県の小学校の校長先生だった方所有のもので1929年製造・・・今は愛知県立芸術大学にあるそうです。この本の表紙の写真はそのヴァイオリンだそうです。とてもすばらしいヴァイオリンだとのこと。もう、一つ、鈴木政吉が作った1926年製のヴァイオリンを著者の井上さつきさんは見たことがあると記されています。こちらは、皇太子殿下が愛用されているそうです。
 量販用のヴァイオリン工場に勤める女性たちは、仕事の後、有志120人あまりが先生について2時間ずつ練習して、合奏を披露する機会があったとのこと。
 三男の鈴木鎮一さんが、子どもの時期からのメソードを開発し、江藤俊哉さんは、そのメソードによる「才能教育第一号」と呼ばれました。鎮一さんは「どの子どもにも効果を上げる」との情熱のもとにすべての子どもに入門を許し、「子どもたちの才能を、ヴァイオリンを通じてどのように伸ばしていくか」ということを中心に据えた教育活動を展開
されました。
 こうしたことも含めて、鈴木政吉さんは日本のヴァイオリン王なのだと思います。
 今日も、よい日となりますように。
 

|

« 『神様の薔薇』 下川香苗 | トップページ | 『毎日読みたい美智子さま』 ー愛が生まれるおことば81ー »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 『日本のヴァイオリン王』 ー鈴木政吉の生涯と幻の名器ー:

« 『神様の薔薇』 下川香苗 | トップページ | 『毎日読みたい美智子さま』 ー愛が生まれるおことば81ー »