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2016年5月14日 (土)

『なるほどの対話』 河合隼雄・吉本ばなな

0003 『なるほどの対話』
河合隼雄・吉本ばなな
日本放送出版協会 
2002年4月25日 第1刷 発行
 この本の表紙・・・ 吉本ばななさんの友人が改装をしながら住んでいる京都の町屋で対談している 著者、おふたりの写真です。
 このとき35歳の吉本さん、その倍ほどの年齢の河合隼雄さんが腹蔵なく語り合った対話が収められている本です。
 高名な作家になった今も、少女時代と同じつらさを味わいながら歩んでいる吉本さんとその話を聞きながら考えを語っている河合隼雄さん・・・なかなかこうした本は他にはないかもしれません。
 特に心に残った「世間の圧力」という章から少し紹介させていただきます。
  ◇   □   ※   ○  ☆
 吉本) 小学校でも中学校でも、世間話ができなかったんです。よくあるような話が。「いい天気ですね」とか「お天気ってすきですかとか。できないから、(どんな話ができなかったという)たとえも出せやしない。(笑)
河合)本当やね(笑)
 
吉本)お茶とコーヒー、どっちが好きなの?」とか「そういえば、あそこに美味しいコーヒーあるよね」みたいな話をしていると、だんだん魂が抜けたみたいになって具合まで悪くなって。高校のとき、それが最もひどくて、「もう、生きていてもしょうがない」と思うくらい世の中に参加できなくなってしまったんです。 ー中略ー 高校のとき、最高につらかった。「自分はダメなんじゃないか」と思いました。みんなが楽しいと思っていることがさっぱりわからないというのは・・・・ いじめられかけても、笑いでごまかしたり、うまく逃げたりして、なんとかしのいで。だから学校には、いい思い出はほとんどないんです。「学校は自分をぐしゃぐしゃにした」という印象が強くあります。学校に行かなかった自分を見てみたいなあ。素晴らしくもないだろうけど、いまみたいではなかっただろうなあ・・・
河合)そのとき、その思いを誰かに話したりしなかったのですか?
吉本)自分がすごくつらいと思っていることを自分も知らなかったんですね。学校には行くものだって思い込んでいたから。学校って、行くんだよなあって。ほんとに、つらかったです。・・・ 私みたいな人は、これからどうやって生きていくんだろう。
河合)そういう人たちは、ほんまに、ぼくらがカウンセリングで会っている人たちです。ものごとをよくわかっているんだけれど、集団のなかには入っていけないんですね。・・・その人たちがいちばん苦手なのが、その会話なんです。
吉本)ああやっぱりねえ。
河合)仕事はできるんです。頭はいいから、仕事はできるんですよ。ところがみんな、人間関係が・・・ ー中略ー
吉本)そういう人たちにとっての幸せは、社会に復帰することなんでしょうか?
河合)幸せかは、わかりませんが、まあ復帰しといて損はないでしょう。でも、復帰するために自分を殺したら意味はないですよ。
吉本)そうですよね。
河合)自分を殺して復帰したのでは、意味ないです。だからぼくら、すっごい苦労してるんです。
                  ◇   □   ※   ○  ☆
 ご存じのように、吉本ばなな さんのお父さんは、有名な思想家の吉本隆明さんです。お父さんは、夜は雨戸を閉めろといい、ばななさんは、朝の光で目覚めたいので雨戸は閉めたくないと思う。 長年、論争し未解決 ・・・というような話も収められています。
 余談ですが、先日、ご紹介した河合隼雄さんの著『ココロの止まり木』の中で「アタリ!」と河合さんを喜ばせた本として、吉本ばななさんの『ハゴロモ』が上げてありました。「人の、意図しない優しさは、さりげないことばの数々は、羽衣なのだと私は思った」などという文に深く心を動かされたそうです。
 よろしければ、お読みください。 
 今日も、よい日となりますように。
 明日は日曜日。キリスト教会の礼拝にお出かけください。

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