« 『嬉しうて、そして・・・』 | トップページ | 橘曙覧(たちばな あけみ) 独楽吟 »

2016年6月17日 (金)

『百歳の力』 篠田桃紅

Img_000211『百歳の力』 

篠田桃紅 著

集英社新書 

2014年6月22日 第1刷 発行

2015年6月21日 第6刷 発行

 墨を用いた抽象表現の芸術家 103歳の篠田桃紅さんと 104歳の現役医師 日野原重明さんの 対談をテレビでご覧になった方も多いのではないでしょうか。

 ぴしっと背筋の通った姿勢で対談しておられましたね。そして、この本の文章・内容も、そのとおり、ご自身の考え・生き方がぴしっと貫かれており、それはそれは心地よいほどです。

 手なずけられないものに惹かれる

の章をご紹介いたします。

      ◇     □     ○     ※    ☆

  墨はいつも裏切ります。日々刻々と変わるお天気やこちらの気持ちに、非常に敏感に反応する。私などにちっとも手なずけられない。冷たいんですね、いつだって。私に一緒にならないで、一歩も二歩も離れている。墨っていうものは、そういうものなんです。私は、手なずけられないということに、好き嫌いというより、惹かれる。

 あるときは、思いもかけないぐらい、墨は美しい表情を出すんです。自分でも、こんなにうっとりする線が引けるとは思わなかった、っていうものを授けるんです。ときどき、私を越える。こんなに美しいものを描ける力があったんだって、自分で自分にびっくりする。惚れ直すことが出来るんです。墨には、それくらい幅があるんですよ。 だけど、やっぱり、その線は、私の中にあるものなんですね。墨は、敏感すぎるくらい敏感だから、描いているときに派生している私の気分を拾うことがあるんです。・・・中略・・・

 中国の乾隆帝の時代(清の第六代皇帝、在位1735年から95年)につくられた墨が一番いいとされている。・・・その墨は、どこかの谷間に生えている松の根を燃やして、遙か高いところまで昇ったいちばん軽い煤(すす)だけを集めて固める。それを頂煙墨と言って、いい墨の代名詞となった。・・・墨というのは、火でつくられて水で生きます。火であって水なんです。相反する両極を持つから、美しいんですよ。どんな人も、どんなものも、届かないものを、墨は持っているんです。

         ◇     □     ○     ※    ☆

  墨を磨って(すって)芸術作品を生み出すことに打ち込んできた方のおっしゃることですから、深みがありますね。

 墨童(ぼくどう)という言葉をこの本で初めて知りました。

  墨を磨るのは、12歳ぐらいの、無心で、あまり力の強くない子ども。大人の力では得られない、子どもが磨る墨色がいちばん美しいからと、墨童という童を雇った。それくらい、墨というのは繊細に取り扱われていた。

 奥が深い世界ですね。103歳を超えて、修練を積んでおられることに心から敬意を表します。

  今日も、よい日となりますように。

|

« 『嬉しうて、そして・・・』 | トップページ | 橘曙覧(たちばな あけみ) 独楽吟 »

コメント

一人でも人生を楽しむ秘訣の5ポイントを読んだだけで、私は早死するかもな....と、笑ってしまいました。なるほどです!

※ コメント、ありがとう (^J^)
 先日、私が28歳の時に担任した中学2年生たちが、同窓会を開いて、70歳のお祝いをしてくれました。奇しくも、2年8組・・・中学2年生は14歳ですから、担任した時の私の2倍の56歳ということ ・・・ なんだか、複雑な思いがしました。4年後には、彼らの還暦祝いの同窓会 ?! 健康で長生きしてくださいまし。 70歳を迎えるのは古来、まれ ということで古希 今の日本では、まれではありませんよね。
 今日も、よい日となりますように。 

投稿: rommy | 2016年6月20日 (月) 19時49分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 『百歳の力』 篠田桃紅:

« 『嬉しうて、そして・・・』 | トップページ | 橘曙覧(たちばな あけみ) 独楽吟 »