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2016年6月15日 (水)

『卜伝飄々』(ぼくでん ひょうひょう)

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『卜伝飄々』(ぼくでん ひょうひょう)

風野真知雄  著

文藝春秋 

2015年8月25日 第1刷発行

 生涯に200人と試合をして、負けたことがないと言われる剣聖 塚原卜伝が老境にさしかかった時代の話 七篇が収められています。題名の通り、飄々とした味わいがあります。

 第六話 「月を斬る」での 卜伝と若い女性との会話には 笑いを誘われました。

「夜、剣をふってますね?」

「ああ、ご覧になりましたか」

「上のほうを向いてませんか?」

・・・

「じつは、月を斬る稽古をしておりましてな」

「まあ、斬れるのですか?」

「斬れないでしょうな」

「斬れないのに稽古を?」

「惚けましたかな」

答えないところを見ると、疑いはもっているらしい。

「だが、老いて惚けるのは、もしかしたら人が次の高みへ達したのではないかと思ったりしましてな」

「次の高み?」

「ええ」

「でも、惚けるのに努力は要りませんでしょ。わらわの叔父にも老いて惚けた人がいましたが、高いところに行ったというより、目いっぱい下まで降りたというようすでしたよ」

「そうでしたか。では、努力して惚けると、次の高みに達することができるのではないでしょうか」

「努力して惚ける? どうも卜伝どののおっしゃることは、ときどきよくわかりませんね」

    ◇     □     ○    ☆

 こんな調子なのですが、いざ、剣を持って立ち会うと めっぽう強い ・・・ 危ない目にもあうのですが、勝つ工夫を惜しまないのですね。

 身体も、しっかりと鍛えていて、自分と同年齢の剣士と対峙して、相手の鍛錬のなさがすぐに伝わってきて、これほど衰えるのか、と無残に思うところもあります。

 毎日、剣を振らなかったのか。衰えたと思ったあたりを鍛え直したりしなかったのか。身を慎み、毎日、やるべきことをやらなかったのか。

うーむ、私に向かって言われている言葉のように思えてきました。

 本の結びでは、四回目の家出 ・・・修行の旅に卜伝は出かけています。何と80歳を越えているのにです。 すごいですね。

 ちなみに、宮本武蔵も不敗ですが、戦ったのは60余たびだそうです。

 今日も、よい日となりますように。

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