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2016年10月 6日 (木)

『名コンサートマスター キュッヒルの音楽手帳』

『名コンサートマスター キュッヒルの音楽手帳』

ライナー・キュッヒル

取材・文 野村三郎

音楽之友社 2016年7月5日 第1刷発行

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 この本の表紙の写真を見たとき、あっ、この人、どこかで見たことがあると思いました。

 お正月にテレビで放送されるウイーンフィルハーモニーのニューイヤーコンサートで一番前でヴァイオリンを弾いている人でした。キュッヒルさんは名門であるこのオーケストラのコンサートマスターに1971年に21歳で、いきなり就任し、2016年8月まで、45年その大役を果たし続けたのです。

 自分の結婚式の日も、式が終わると、すぐにヴァイオリンを練習し始めたので、新妻はその熱心さに感動したそうですが、キュッヒルさんの父親は、「今日だけは、練習はやめておけ」とたしなめたそうです。

 スメタナの「モルダウ」を11歳の時に生演奏で聴き、すっかり魅せられて、お父さんにヴァイオリンをねだって、以来、ヴァイオリン一筋の人生とのこと。

 名高い先生(サモヒルさん・・・この方もウイーンフィルのコンマスを務めた時代があったそうです)について最初にその先生の前でヴァイオリンを弾き終わった途端に意識を失って倒れたというエピソードがあるそうです。

 あの「ウエストサイド物語」を作曲した指揮者、バーンスタインは、キュッヒルさんを評して「世界で最も初見(初めて見た楽譜を、その場で演奏すること)のできる音楽家だ」とほめたそうです。

 卓越したヴァイオリニストで、誇り高い音楽家なのですね。彼のこんな言葉がこの本に書かれています。

   ◇    □    ○   ※   ☆

・指揮者はオーケストラの邪魔さえしてくれなければいい

・確かに指揮者は団員を曲に近づけ、オーケストラをまとめるやくめはあります。しかし、この民主主義の世の中でどうして指揮者だけが独裁者のように振る舞っていいのでしょうか。指揮者はオーケストラなしでは演奏できません。しかし、オーケストラは指揮者なしでも演奏できます。

            ◇    □    ○   ※   ☆

 すごい自負心・誇りですね。 よほどの実力が伴っていなければ、45年間、世界最高峰と言われるウイーン・フィルのコンサート・マスターをつとめることはできなかったことと思います。  ただ、キュッヒルさん自身は、自分自身やウイーン・フィルオーケストラを特別な存在として考えて欲しくないそうです。

 この本を書いた野村三郎さんはこう書いています。

 彼はどこどこのオーケストラが世界で一番だ、などというのを嫌う。「我々はこんくーるをしているわけでもないし、競争をしているわけでもないのだ」これが彼の信条である。

 うーん、すてきな人なのだなぁ、と思いました。

0001  ちなみに1975年、2回目の日本訪問の時、着物姿でエレベーターに乗っていた女性に一目惚れし、結婚なさったそうです。

【キュッヒルさんと真智子夫人】

 そうした出会いのきっかけとなった着物を貸して、と当時、友人から言われたこともあったとか。

 深まる芸術の秋。

 今日も、よい日となりますように。

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