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2017年2月 8日 (水)

『闇医者 おゑん秘録帖』

『闇医者 おゑん秘録帖』

あさのあつこ

中央公論新社 2013年2月25日 初版発行

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  あさのあつこさんは、『バッテリー』『バッテリーⅡ』など、野球に打ち込む少年の姿を描いた作品でご存じの方も多いかと思います。

 一転して、この小説では、男性の都合で不本意な歩みを強いられてきた女性に、自分自身と自分に宿った新しい生命の大切さを見つめさせ、女性の強さを信じて歩む方向へと導く女医の姿が描かれています。『婦人公論』という月刊誌に連載され、単行本として出版されたとのことです。

 昨日の「聴く」こととつながるところを感じましたので、引用させていただきます。 女医おゑんがいのちを助けたお春という女性について感じているところです。

 □   ◇   ○   ☆

 おゑんはお春の耳を見た。耳のことなど誰も気にかけない。しかし、ちゃんと聞くことのできる耳は貴重だ。他者の言葉を拾う。本気で聞き取ろうとする。能弁な舌を持つ者は多いけれど、誠実な耳を備えている者はごく稀だ。お春の耳は上等だった。

    ◇    □   ○    ☆

  もう一箇所は、そういうお春におゑんが祖父から聞いたことを語ったところです。
        □   ◇   ○   ☆

  言葉には外に出すべきものと、内に秘めたままにしておくべきものと二通りがあるのだそうです。 秘めておくべきものを外に出せば禍(わざわい)となり、外に出すべきものを秘めておくと腐ります。

    □   ◇   ○   ☆

 時代小説として書かれていますが、特に上記の二箇所は印象に残りました。 「傾聴」ということ、そして世阿弥の「秘すれば花」という言葉とを連想したからかもしれません。

  今日も、よい日となりますように。

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