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2017年6月16日 (金)

『羊と鋼の森』

0002『羊と鋼の森』

宮下奈都 著

文藝春秋社 

2015年9月15日 第1刷発行

2016年1月25日 第8刷発行

 この本については、以前にも書かせていただいたことがあります。貸してくれた妹に返すにあたって、もう一度読んでみました。

  うーむ・・・感心してしまいました。前に一度読んだのに、よくもこれだけ新鮮に読めるものだと  つまり、 自分の記憶力がとても大らかになっていることにです。 いえいえ、こんな前振りはやめて、心に届いた表現をいくつか

    □      ◇      ○    ※    ☆

 主人公、外村は 山で暮らして、森に育ててもらった青年・・・体育館のピアノの調律にやってきた人の手によってピアノの発する音の景色がはっきりしてきたことに魅せられて、調律師の道を志します。  それまで、ピアノをさわったことも、特に音楽が好きだったこともなかったのに。

 調律師学校を卒業して、何人かの先輩調律師のいる会社に入ることができ、、外村は調律の仕事の経験を積みながらいろいろなことに目が開かれていきます。

  フィナーレは、先輩調律師の結婚披露パーティ ・・・そのレストランのピアノの調律をゆだねられた外村。ピアノを弾くのは、17歳の高校生和音。

 この和音の演奏について、こんな叙述がなされています。その演奏がなされたのは母親が「ピアノで食べていける人なんてひと握りの人だけよ」と言ったとき、和音がこう答えた夜のことでした。 「ピアノを食べて生きていくんだよ」

 和音のピアノは静かだった。静かな、森の中にこんこんと湧き出る泉のような印象だ。・・・和音がピアノの前にすわったとき、はっとした。背中が毅然としていた。白い指を鍵盤に乗せ、静かな曲が始まった瞬間に、記憶も雑念も、どこかへ飛んでいってしまった。・・・和音のピアノは世界とつながる泉で、涸れるどころか、誰も聴く人がいなかったとしてもずっと湧き出ているのだった。

 さて、場面は変わってレストランでのピアノの試奏

  ・・・その辺に漂っていた音楽をそっとつかまえて、ピアノで取り出してみせているみたいだ。どこにも無理のない、自然な手の動き。和音が弾くと、何もかもが自然に見える。ピアノって、音楽って、ほんとうは自然そのものなんじゃないか。

 結婚披露パーティでの演奏

  「和音のピアノ。いいですよね。」

   和音の双子の姉妹 (どちらが姉か妹か忘れました!)由仁が涙声で言う。

「祝ってる。柳さんの結婚をおめでとう、って言ってる、そう聴こえますよね」

 外村が調律師の道を志すきっかけとなった板鳥調律師が和音の演奏を聴きながら外村に言います。「もっと和音さんを信頼してもいいですね」「はい」

「ピアニストを育てるのも、私たち調律師の仕事です」

   ◇     □      ○    ※    ☆

 なんだか  いいですね。  手元に置いて、時々読み返したくなる本です。

妹よ、ありがとう。 ちゃんと返しますからね。安心してください(^J^)

  今日も、よい日となりますように。

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コメント

宮下奈都さんのご著書は何冊も拝読致しております。
心に響き、後々まで届いた想いが残る作品が多いです。
兄妹で本を貸し借りでき、感想も伝え合える素敵な関係ですね!!
息子とは時々、本を貸し借り致します。
※ ムーミンパパより
コメント、ありがとうございます。息子さんと本をやりとりできること、すてきですね。なかなかできないことのように思えます。 宮下さんの本は他に読んだことがないので、これから出合うのを楽しみにいたします。読みたい作家、作品があるのは、本当に嬉しいことですね。 幸せの一つです。(^ー^)

投稿: ディンブラ | 2017年6月16日 (金) 21時18分

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