『サンタクロースの部屋』 松岡享子
- 子どもと本をめぐって ー
松岡 享子 著
こぐま社 1978年11月20日
第1刷発行
この本の冒頭、 はしがきにかえて にまず、魅力を感じました。
◇ □ ○ ※ ☆
もう数年前のことになるが、アメリカのある児童文学評論誌に、つぎのような一文が掲載されていた。
「子どもたちは、遅かれ早かれ、サンタクロースが本当はだれかを知る。知ってしまえば、そのこと自体は他愛のないこととして片付けられてしまうだろう。しかし、幼い日に、心からサンタクロースの存在を信じることは、その人の中に、信じるという能力を養う。わたしたちは、サンタクロースその人の重要さのためでなく、サンタクロースが子どもの心に働きかけて生み出すこの能力のゆえに、サンタクロースをもっと大事にしなければいけない」
というのが、その大要であった。この能力には、たしかキャパシティという言葉が使われていた。キャパシティは劇場の座席数などを示すときに使われる言葉で、収容能力を意味する。心の中に、ひとたびサンタクロースを住まわせた子は、心の中に、サンタクロースを収容する空間を作り上げている。サンタクロースその人は、いつかその子の心の外へ出て行ってしまうだろう。だがサンタクロースが占めていた心の空間は、その子の中に残る。この空間がある限り、人は成長に従って、サンタクロースに代わる新しい住人を、ここに迎え入れることができる。
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今日も、よい日となりますように。
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