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2018年2月 3日 (土)

藤沢周平さんの小説観

0004『藤沢周平のこころ』

文春ムック オール讀物責任編集

文藝春秋 平成28年12月26日発行

 この本は、藤沢周平さん没後20年 完全保存版 ということで編集・発行されたそうですから、今年は、没後22年にあたるのですね。

  たくさんの方のたくさんの文章が収められているので、読み応えがあります。

 その中から、二つ、紹介させていただきます。 

  藤沢周平さんご自身の言葉と、城山三郎さんが藤沢さんとの対談で披露されている詩です。

 ◇  □  ○  ※ ☆

  転機の作物  藤沢周平  から   ー抜粋・編集ー

 私が小説を書き始めたころは暗い色合いの小説ばかり書いていた、当時の小説を読み返すと男女の愛は別離で終わるし、武士は死んで物語を終わるというふうだった。ハッピーエンドが書けなかった・・・物語という革ぶくろの中に、私は鬱屈した気分をせっせと流し込んだ。・・・書くことだけを考えていた私が、書いたものが読まれること、つまり読者の存在に気づいたのはいつごろだったのか、正確なことはわからない。

 だが読まれることが視野に入ってくると、私の小説が、大衆小説のおもしろさの中の大切な要件である明るさと救いを欠いていることは自明のことだった。かなり他人迷惑な産物でもある。そしてそのことに気づいたというのは、気持の中にあった鬱屈がまったく解消されたわけではないにしろ、書くことによってある程度は癒やされ、解放されたということでもあった。

 そういう全体を意識してしまえば、いつまでも同じ歌をうたうわけにいかないことは、これまた自明のことである。そのまま小説を書きつづけるとしたら、鬱屈だけをうたうのではなく、救済された自分をもうたうべきであった。それが自分と読者に対して正直であり得る唯一の方法だった。・・・

             ◇  □  ○  ※ ☆

  この文を読ませていただいて、藤沢周平さんの作家としての在り方の核心となるところが過不足なく真摯・誠実に吐露されているのではないかと思いました。

  城山三郎さんの詩は、明日、紹介させていただきますね。

   今日も、よい日となりますように。

  明日は、二月最初の日曜日。キリスト教会の礼拝においでください。

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