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2018年5月17日 (木)

『ピアニストだって冒険する』  その2

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  中村紘子さんが音楽監督を務めた「浜松国際ピアノアカデミーは2016年に20周年を迎えたとのことです。大きな構想でスタートし、息の長い歩みを積み重ねてこられたのですね。

 国内外を問わず、若いピアニストを育成し送り出すこのアカデミー・・・第一回の参加者について、中村紘子さんの書いておられることから、二人の若手ピアニストのことを・・・

   ◇    □    ○    ※   ☆

 ウクライナからの参加者は美しい女性だった。彼女は私のクラスでラヴェルの「夜のガスパール」の「オンディーヌ」を弾き始めたのだが、グリッサンド(指を鍵盤上で滑らせる)で弾くとされる部分をスケール(音階)を弾くように弾いたので、当然テンポも遅くなり、音もなめらかではなかった。

  そこで、私がいぶかしく思って、「そんなグリッサンドより難しいことをなぜわざわざするの?」と訊いたところ、急にうつむいてしまった。私を見上げた瞳に涙がいっぱい溢れそうになっている。私は何か訊いてはならないことを訊いてしまったかと、緊張した。

 「私の国ウクライナは、いま、とても貧しい状態で、音楽院にあるピアノはどれも百年ぐらいたった壊れたものばかりで、キイはガタガタ、とてもグリッサンドなどできないのです・・・・・・」

 そして彼女は、しみじみと新品のヤマハコンサートグランドを見つめて言った。「こんなに美しいピアノは初めて・・・・・」

     ◇    □    ○    ※   ☆

 ベトナムから参加した青年は・・・ショパンのノクターンを弾き始めたのだが、一節ひいては手を止め、また弾き始めては手を止める。「どうしたの?」と訊くと、これも胸の詰まるような返事が返ってきた。

  「ぼくは今までこんなに新しくて美しい音の出るピアノに触ったことがありません。それで、あまりに美しくて感動してしまって手が動かない・・・・・」

これも、私を見上げた眼に涙がいっぱい。私もつい貰い泣きをしてしまった。

        ◇    □    ○    ※   ☆

   こうした若者たちに、中村紘子さん、そして「浜松ピアノアカデミー」がどんNkyou


なに大きな働きをしてきたかを思い、改めて中村紘子さんを偲びました。

二枚の写真は『ピアニストだって冒険する』から引用させていただきました。幼い日の中村紘子さん、そして高校生でNHK 交響楽団と世界一周公演なさったときの中村紘子さんです。

 ありがとうございます。

  今日も、よい日となりますように。

 

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