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2018年5月18日 (金)

絵筆ではなく 心

 ずっと以前に、ラジオで聞いた話を思い返しています。

 イタリアのある画家の家を訪れた少年が、「絵筆をください。それで描いたら、ぼくにも きっとあなたのような素晴らしい絵が描けると思うんです」

 画家の奥さんが、絵筆をプレゼントしました。

 大いに喜んで早速、描き始めた少年 ・・・ところが、すぐ、首をかしげました。 おかしいな、こんなはずじゃなかったのに・・・。

 奥さんは、少年に言いました。「もう、分かったでしょ。絵筆が絵を描いているのではないことが。 絵筆じゃなくて、心なの」

       ◇    □     ○   ※  ☆

  あるデパートが岐阜市にオープンしたとき、ファーブル展が開催されました。

  ファーブルの昆虫標本箱も展示されました。几帳面な文字で、採集の日付けと昆虫の名前が記されていました。二段だったか、三段だったかに一本の長い針に同じ種類の昆虫が ・・・ ファーブルは大きな研究を成し遂げた人なのに、その頃、フランスの小学校の先生の給料は、お金持ちの馬車の馬の世話をする人よりも低かったのだそうです。 一本の昆虫針を有効に用いるのは、他にも理由があるかと思いますが、つつましい生活の反映に思えました。

 そのファーブルの展示会で、一番心に残ったのは、小さな机でした。ファーブル自身の詩が添えられていました。「小さな胡桃の机よ」という題だったと思います。  ノートを広げ、ペンとインク壺を置いたら、それで一杯になってしまうほどの小さな机でした。

  その机の上で、『ファーブル昆虫記』は執筆されたのだと展示物の説明には描かれていました。

  画家の絵筆で描いたら、美しい絵が描ける、と思い込んでいた少年を私は笑えないなと思いました。 最新のパソコンを手に入れたら、自分は機器の活躍する世界の最先端に立てる ・・・ そういう思い込みをしがちな自分を反省したことは一度や二度ではありません。 つまり、懲りないのです。

 最近、素敵な写真を撮るかたが、カメラを新しくしたら、そのことを知った人たちが、「せっかくいい写真を撮れるようにあなたと同じカメラを苦労して手に入れたのにあっさりと他のカメラに換えてしまうとは、ひどいじゃありませんか」と苦情を述べたそうです。

 絵筆ではなく、心 ・・・ 時々、思い出す 忘れられない話です。

 今日も、よい日となりますように。

 

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