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2018年6月24日 (日)

映画 「羊と鋼の森」

 この映画の原本は、一昨年でしたか、本屋大賞などの多くの賞に輝いた『羊と鋼の森』  著者 宮下奈都さんです。

 期待して観に行き、そして期待以上の映画でした。 ← あくまでも、個人の感想です ← 最近、テレビなどの宣伝で、こういう言葉が文字は小さくても入っていますね (^J^) 誠実なような、責任逃れのような (^_^;

 映画の中で、主人公に、どんな音を目指しているのかと問われて先輩ピアノ調律師は、原民喜の書いた本の一節をもって、答えます。

  明るく静かに澄んで懐しい文体、少しは甘えてゐるやうでありながら、きびしく深いものを湛へてゐる文体、夢のやうに美しいが現実のやうにたしかな文体 ・・・ この「文体」を「ピアノの音」に置き換えて目指しているのだと。

  この映画の中に登場するピアノ曲を演奏しているピアニストのひとりに辻井伸行さんの名があります。たまたまテレビで、辻井さんがそれを生演奏されるのを見る機会がありました。 映画のラストを飾る The dream of Lambs (子羊の夢)が そうです。

 映画館で映画を見るのは久しぶりでした。私はこの映画が好きです。(あくまでも個人の感想です(^J^)です。この映画の公開サイトは下記のURLです。ピアノ調律師さんたちの感想も紹介されています。

http://hitsuji-hagane-movie.com/

 

 今日も、よい日となりますように。

 日曜日。キリスト教会の礼拝においでください。

  映画の終わりに原民喜さんの『砂漠の花』がテロップで出ていましたので、

ネットで検索してみました。 原典の文脈をご覧になりたい方は、「続きを読む」をクリックしてください。

 

沙漠の花

原民喜

 堀辰雄氏から「牧歌」といふ署名入りの美しい本を送つて頂いた。私は堀さんを遠くから敬愛するばかりで、まだ一度もお目にかかつたことはないのだが、これは荒涼としたなかに咲いてゐる花のやうにおもはれた。この小作品集を読んでゐると、ふと文体について私は考へさせられた。
 明るく静かに澄んで懐しい文体、少しは甘えてゐるやうでありながら、きびしく深いものを湛へてゐる文体、夢のやうに美しいが現実のやうにたしかな文体……私はこんな文体に憧れてゐる。だが結局、文体はそれをつくりだす心の反映でしかないのだらう。
 私には四、五人の読者があればいゝと考えてゐる。だが、はたして私自身は私の読者なのだらうか、さう思ひながら、以前書いた作品を読み返してみた。心をこめて書いたものはやはり自分を感動させることができるやうだつた。私は自分で自分に感動できる人間になりたい。リルケは最後の「悲歌」を書上げたときかう云つてゐる。
「私はかくてこの物のために生き抜いて来たのです、すべてに堪へて。すべてに。そして必要だつたのは、これだつたのです。ただしこれだけだつたのです。でも、もうそれはあるのです。あるのですアーメン」
 かういふことがいへる日が来たら、どんなにいいだらうか。私も……。
 私は私の書きたいものだけ書き上げたら早くあの世に行きたい。と、こんなことを友人に話したところ、奥野信太郎さんから電話がかかつて来た。
「死んではいけませんよ、死んでは。元気を出しなさい」
 私が自殺でもするのかと気づかはれたのだが、私についてそんなに心配して頂けたのはうれしかつた。
「私はまるでどことも知れぬ所へゆく為に、無限の孤独のなかを横切つてゐる様な気がします。私自身が沙漠であり、同時に旅人であり、駱駝なのです」と、作品を書くことのほかに何も人生から期待してゐないフローベールの手紙は私の心を鞭打つ。
 昔から、逞しい作家や偉い作家なら、ありあまるほどゐるやうだ。だが、私にとつて、心惹かれる懐しい作家はだんだん少くなつて行くやうだ。私が流転のなかで持ち歩いてゐる「マルテの手記」の余白に、近頃かう書き込んでおいた。昭和廿四年秋、私の途は既に決定されてゐるのではあるまいか。荒涼に耐へて、一すぢ懐しいものを滲じますことができれば何も望むところはなささうだ。

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コメント

私たちが幼い頃から 尊敬するピアノ調律師のK氏(私たちは彼をピアノのお医者さんとしてドクターKとお呼びしていますが)は
「この本は僕の若いときそのままだ」とお話下さいました。ピアノの音に魅入られ、良き師と出会い、調律ひとすじに人生を捧げて来られました。このような方に出会え、長年、ピアノを診ていただけ、時折お話をうかがえる自分の幸運に感謝しています。

※ムーミンパパより
コメント、ありがとう。すてきなピアノ調律師さんとの出会い 感謝ですね。 ゴフスタインの『ピアノ調律師』という絵本を思い浮かべました。 おじいさん調律師と孫娘、そして世界的ピアニスト・・。 今日も、良い日を(^ー^)

投稿: kei | 2018年6月26日 (火) 11時17分

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