« 『にんげん住所録』 高峰秀子さん 著 | トップページ | 羊羹(ようかん) と文豪たち   »

2019年9月 9日 (月)

『知の巨人 荻生徂徠伝』 佐藤雅美 著

0004_20190908215301 『知の巨人 荻生徂徠伝』

佐藤雅美 著

KADOKAWA  2014年4月30日 初版発行

 図書館でこの本を見かけて、どうしようかと迷いました.

荻生徂徠(おぎゅうそらい)・・・あまり関心を引く人物名ではなかったのです。・・・中学校か、高校の日本史の教科書でちょっと出てくるだけの人くらいの記憶しかなかったからです。でも、「知の巨人」というタイトルにひかれて、読んでみました。

 読んでの収穫は、五代将軍 綱吉が、ひとかたならぬ学問好きであったこと、「生類憐れみの令」のことで不評をかっていますが、どうも、仕えていた家来たちが忖度(そんたく)して、運用に行きすぎのところがあったふしがあったかもしれないということで、ちょっと見直したことです。

 ただし、著者の佐藤雅美さんによると、徳川の将軍の中で、傑出しているのは、初代の家康と八代の吉宗だとのことです。

 綱吉は、学問好きで、自分が学ぶだけでなく、講釈をして聞かせることも好み、さらに自分に仕える側近たち二十数人を柳沢出羽守保明の屋敷に通わせて学ばせたそうで、そのために出羽守は二十数人の儒者を抱えていて、その中で群を抜いた実力を備えていたのが荻生徂徠なのだそうです。

 

 将軍綱吉と荻生徂徠のエピソードを本書から引用させていただきます。

 ◇    □    ○     ※    ☆

 その年、元禄十二年も押し詰まってのことだった。いつものように御座之間で綱吉の講釈を聞いていて、徂徠はなにげなく首を傾げた。解釈が間違っているように思えたのだ。綱吉は目ざとく見咎め、「そのほう」と扇の先を徂徠に向け、つぎに扇で足許をトントンと突いていう。

「これへまいれ」

 徂徠は午前近くに進み出た。綱吉はいう。

「首を傾げておったようだが、余の申すことがおかしいとでもいうのか」

「いかにもさようでございます」

「どうおかしいのか、申してみよ」

「さればでございます」

徂徠はどうおかしいかを縷々(るる)説明した。

「なるほど」

綱吉は素直に納得し、機嫌をよくして手ずから印籠を授けた。

 このことはすぐに出羽守の耳に入った。名誉なことである。明けて元禄十三年一月、徂徠の禄二十五人扶持を知行二百石にあらためた。

  ◇   □   ○   ※   ☆

 徳川綱吉という将軍への私のイメージは、大きく変わりました。 上記のとおりではなくても、これに近いことがあったのだと思うからです。

 もう一つ、本書で印象に残ったのは、中国の本を和訳することを「和らげ」(やわらげ」という表現があったことです。

 翻訳の肝要な働きは、そういうことかもしれないと感じました。

 今日も、良い日となりますように。

 

 

 

|

« 『にんげん住所録』 高峰秀子さん 著 | トップページ | 羊羹(ようかん) と文豪たち   »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 『にんげん住所録』 高峰秀子さん 著 | トップページ | 羊羹(ようかん) と文豪たち   »