『千住家にストラディヴァリウスが来た日』
千住文子 著
新潮社 2005年10月25日 発行
2007年5月30日 7刷
父方も母方も、ほとんどが理工・医学系の家系に生まれた三人が、長男 博さんは日本画家、次男 明さんは作曲家、末っ子の真理子さんはヴァイオリニストになって、「芸術家三兄妹」と呼ばれている千住家。
この本には、その千住家に名器ストラディヴァリウスの傑作・・・ローマ教皇クレメンス14世に捧げられ、教皇の逝去後は、教皇の側近⇒フランス貴族⇒スイスの大富豪と渡り、その後約300年間眠り続けていた「デュランティ」がやってくることになった波乱に満ちた話が綴られています。
その「デュランティ」を奏でて得た収入は、手に入れるために借りたお金を返すことに注がれていくことになるのです。けれど、千住真理子さんは、こう語っています。
「・・・世の中の人たちは、みんな、良い音、きれいな音、心に響いてくる感動を待ってるのよ。このヴァイオリンで、みんなの心を癒やしてあげたいと思わない? みんなが喜んでくれれば、私の疲れなんて吹っ飛んじゃう」
母親の文子さんは、これを聞いて心が熱くなったそうです。
お金は確かに大切だ。だが、これから真理子が働いて得た収入は、すべて、借金の返済にまわる。それでいいのだ。生きて行くための最低限のモノさえあれば、あとは不要だ。亡夫も、私をそう教育した。余分な金は必要ない、と。 ・・・三人の子どもたちには常々「どんなことにも、忍耐強く、凛として人生を送るんだよ」と言ってきた・・・。
たまたま、土曜日朝のテレビ番組「サワコの朝」に千住真理子さんが登場し、情熱を込めて対談しておられるのを観ました。音楽一筋に・・・という歩みではなく、十代の早いうちにプロのヴァイオリニストになった後、音楽科ではなく別の科に進学なさるなど、いろいろな苦しみ、困難にぶつかり、それでも封印していたヴァイオリニスとの道に立ち返って真摯に歩み続けている方であることが伝わって来ました。
千住真理子さんの生演奏を一度だけ、岐阜市で聴かせていただいたことがあります。 千住真理子さんと「デュランティ」が出会ったのは、その後のことでしたから、その生演奏をいつの日か聴けることを楽しみにしています。
今日も、良い日となりますように。 日曜日、キリスト教会の礼拝にお出かけください。
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