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2020年7月23日 (木)

『風花病棟』 帚木蓬生さん 

0007_20200721105801 『風花病棟』

帚木蓬生 著

新潮社 2009年1月20日 発行

 病棟 とタイトルにあると敬遠したくなるかもしれません。けれど、お医者さんである帚木さんの短編が10編収められていて、随所に心惹かれることばがありました。

 10編、それぞれ異なるお医者さんとめったにない人生上の体験をしてそのお医者さんに出会うことになった人が登場していて、味わいがあります。

 医学生たちの講義に先輩の老医師が登場し、触診と聴診器で患者さんを丁寧に診察し、所見を述べ、担当の主治医がそのあと最新の検査器機でとらえた患者さんのデータを開示すると、老医師の所見とぴったりと重なり合い、医学生が驚嘆する場面があります。(「百日紅」の章)

 指導医が研修医に語った教え「医学的に展望が持てない場合にも、患者さんにとってはあなた自身が、最良の薬なのです」ということばを体験を通して納得して歩む医師。

 また、これと通ずる「希望が最善の薬」ということばも出てきます。

  30年診療所勤めをした医師が退職して郷里で暮らすことにして、研修医の時に出会った看護師のことばを噛みしめるところもあります。「先生、これからも、患者から逃げんで、踏みとどまって、ちゃんと見届けてください」

 心を開こうとしなかった人が、その医師だけには心を開いて心情を吐露するようになる場面がいくつか描かれています。 患者さんの前で涙をこらえられなくなる医師 自分で出来る処置を看護師にまかせず心を込めて為す医師  他の人には何を聞かれても「グワッ グワッ」としか言わないのでアヒルおばさんと呼ばれているおばさんが、ある医師にはちゃんと話すようになって周囲に驚かれる場面も登場します。(「ショットグラス」の章)

 よろしければ、どうぞ。立場は医師と患者であるのですが、それも含めて、まず人と人であることがこの帚木さんの作品の根底にあるのだとかんじました。

  良い日となりますように。

 

 

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