『走れメロス』とミシュナ その1
先週の土曜日、青春時代以来のチームメイトのことを少し書きました。
文学で友情というと、太宰治さんの名作『走れメロス』が浮かびます。中学2年生の国語の教科書に掲載されていた『走れメロス』の授業のことを書かせてください。 走りに走ったメロスが刑場に到着した場面です。
◇ ◇ ◇ ◇
「私だ、刑吏! 殺されるのは、私だ。メロスだ。彼を人質にした私は、ここにいる!」と、かすれた声で精一ぱいに叫びながら、ついに磔台に昇り、釣り上げられてゆく友の両足に、齧りついた。群衆は、どよめいた。あっぱれ。ゆるせ、と口々にわめいた。セリヌンティウスの縄は、ほどかれたのである。
「セリヌンティウス。」メロスは眼に涙を浮べて言った。「私を殴れ。ちから一ぱいに頬を殴れ。私は、途中で一度、悪い夢を見た。君が若し私を殴ってくれなかったら、私は君と抱擁する資格さえ無いのだ。殴れ。」
セリヌンティウスは、すべてを察した様子で首肯き、刑場一ぱいに鳴り響くほど音高くメロスの右頬を殴った。殴ってから優しく微笑み、
「メロス、私を殴れ。同じくらい音高く私の頬を殴れ。私はこの三日の間、たった一度だけ、ちらと君を疑った。生れて、はじめて君を疑った。君が私を殴ってくれなければ、私は君と抱擁できない。」
メロスは腕に唸りをつけてセリヌンティウスの頬を殴った。
「ありがとう、友よ。」二人同時に言い、ひしと抱き合い、それから嬉し泣きにおいおい声を放って泣いた。
◇ ◇ ◇ ◇
感動のクライマックス ・・・ ここで、一人の生徒がこんな質問をしたのです。
「メロスの右頬を殴ったとありますが、セリヌンティウスは左利きなのですか?」
むむっ ・・・意表を突かれました。 (その授業で、私は国語教師でした!)
その生徒はいつも真剣に文章を読みとろうとする努力家でした。
二人の生徒に前に出てきてもらって、彼の質問の意図を確かめました。
もし、よろしければ、読者の皆さんも、誰かと向き合って、もちろん本当に叩かなくていいですので、右手を出して相手の頬を叩く動作をしてみてください。 そして、今度は左手を出して相手の頬を叩こうとしてみてください。
彼の質問の意味が分かっていただけましたでしょうか。
長くなりますので、この続きは明日ということにさせていただきます。
今日も、良い日となりますように。
写真は勤労感謝の日の今日、収穫したシシトウです。8月以来、元気に育って、濃いめのグリーンの実をたくさん提供してくれています。 本当に感謝です。
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